-
仁義なきヤクザ映画史
¥2,365
著者:伊藤彰彦 発行元:文藝春秋 312ページ 193mm × 135mm ハードカバー *********************** 出版社紹介文より *********************** 血沸き肉躍るアウトロー映画の歴史 「死んでもらいます」 健さんが斬る! 「弾はまだ残っとるがよう」文太が吠える! 任俠の起点たる『忠次旅日記』に始まり、『仁義なき戦い』を経て、『孤狼の血』に至るまで、執念の取材でヤクザ映画100年余の修羅に踏み込む。そこに映し出される「暴力の近現代史」を描き上げる画期的労作。 【本書に登場する作品】 「日本映画最初の侠客」尾上松之助『侠客 祐天吉松』(1910)/「落ちていく無頼漢」大河内傳次郎『忠次旅日記』(1927)/「野良犬でなく狼になれ」高橋英樹『狼の王子』(1963)/「死んでもらいます」高倉健『昭和残侠伝』シリーズ(1965~1972)/「インテリヤクザ」安藤昇『血と掟』(1965)/「底知れない虚無」市川雷蔵『ひとり狼』(1968)/「何かギラギラするもの」千葉真一『日本暗殺秘録』(1969)/「ヤクザの青春群像劇」菅原文太『仁義なき戦い』(1972)/「差別のタブーに踏み込む」高島礼子『極道の妻たち 死んで貰います』(1999)/「在日コリアンヤクザ登場」北野武『アウトレイジ 最終章』(2017)/「全編広島ロケ」役所広司『孤狼の血』(2018)/「任侠ファンタジー」本宮泰風『日本統一』(2019)/「元ヤクザの更生」役所広司『素晴らしき世界』(2021)etc.
-
ナウシカ考 風の谷の黙示録
¥2,420
SOLD OUT
著者:赤坂憲雄 発行元:岩波書店 374ページ 194mm × 135mm ハードカバー *********************** 出版社紹介文より *********************** 一九八二年から雑誌『アニメージュ』に連載され、映画版の制作を挟み九四年に完結した、宮崎駿の長編マンガ『風の谷のナウシカ』。 この作品の可能性の種子は、時代の喘ぎのなか、いま、芽生えと育ちの季節を迎えようとしているのかもしれない――。多くの人に愛読されてきたこのマンガを、二十余年の考察のもと、一篇の思想の書として徹底的に読み解く。 【目次】 はじめに 第一章 西域幻想 1 秘められた原点 アニメとマンガのあいだ はじまりの風景から 宮崎駿の種子をもとめて 2 神人の土地へ 小さな谷の王国 旅立ちのときに 奴隷とはなにか,という問いへ 第二章 風の谷 1 風の一族 部族社会としての風の谷 腐海のほとりに暮らす 風車とメーヴェのある風景 2 蟲愛ずる姫 背負う者の哀しみとともに ギリシャ神話のなかの原像 血にまみれた航海者との出会い 3 子守り歌 孤児たちの物語の群れ あらかじめ壊れた母と子の物語 擬態としての母を演じる 4 不思議な力 物語られる少女の肖像 境界にたたずむ人 王蟲の心を覗くな,という 第三章 腐 海 1 森の人 水と火と調和にかけて 火を捨てて,腐海へ 世界を亡ぼした火とともに 2 蟲使い たがいに影として森に生きる 武器商人から穢れの民へ 森が生まれるはじまりの朝に 3 青き衣の者 ふたつの歴史の切断があった 邪教と予言が顕われるとき 犠牲,または自己犠牲について 4 黒い森 腐海の謎を読みほどくために 第三の自然としての腐海 喰う/喰われる,その果てに 第四章 黙示録 1 年代記 年代記と語りと声と いくつかの歴史語りが交叉する 文字による専制が産み落とした偽王たち 2 生命をあやつる技術 悪魔の技の封印がほどかれる 帝国を支える宗教的呪力の源泉として 対話篇,シュワの庭にて 3 虚無と無垢 呪われた種族の血まみれの女 内なる森を,腐海の尽きるところへ 名づけること,巨神兵からオーマへ 4 千年王国 千年という時間を抱いて 墓所の主との言葉戦いから 物語の終わりに 終 章 宮崎駿の詩学へ おもな参考文献 あとがき
-
ミヤザキワールド 宮崎駿の闇と光
¥3,300
著者:スーザン・ネイピア 訳者:仲達志 発行元:早川書房 432ページ 194mm × 139mm ハードカバー *********************** 出版社紹介文より *********************** "アニメ・クイーン"の異名をとる米タフツ大学教授が、「ルパン三世 カリオストロの城」から「風立ちぬ」まで11の長編と漫画版『風の谷のナウシカ』を徹底解剖。宮崎氏本人とジブリ関係者への取材も踏まえ、魅力の源泉に迫る。日本版オリジナル序文を収録。 【目次】 日本の読者へ―――ミヤザキワールドの闇と光 序章 ミヤザキワールドを探して 第1章 壊れた世界 第2章 アニメ作家のつくり方 第3章 絵を動かす歓び 第4章 上昇と下降『ルパン三世 カリオストロの城』 第5章 『風の谷のナウシカ』と「女性原理」 第6章 大空の孤児たち『天空の城ラピュタ』 第7章 魔法の森の傘 『となりのトトロ』に見る国と個人のトラウマ克服への道 第8章 魔女と都市 『魔女の宅急便』における時間、空間、ジェンダー 第9章 カサブランカに舞い降りる『紅の豚』 第10章 救世主から巫女へ 「闇のなかのまたたく光」を求める漫画版『風の谷のナウシカ』 第11章 他者の顔 『もののけ姫』の横断される境界 第12章 『千と千尋の神隠し』の私的な世界の終わり 第13章 城と呪いと共同体『ハウルの動く城』 第14章 不思議で貴い宝 『崖の上のポニョ』の無垢な者たちが招く世界の終わり 第15章 「恐ろしい風」『風立ちぬ』 第16章 結び 謝辞 訳者あとがき 参考文献 原注 索引
-
映画を追え
¥2,640
著者:山根貞男 発行元:草思社 296ページ 193mm × 135mm ハードカバー *********************** 出版社紹介文より *********************** 戦前の日本映画のフィルムは一説によると一割ぐらいしか残っていないという。映画は一時の消費娯楽とされ、見終わったら廃棄されてきたからだ。全国津々浦々の場末の映画館まで上映が終わると、一様にジャンクされてきた(文字通り刻んでつぶされたり、別の工業資源に使われたりした)。その結果、欧米の各国に比べて、日本映画の保存率は低く名画と言われるものも残っていない。小津安二郎監督や溝口健二監督といった有名監督のサイレントの初期作品はほとんど残っていない。山中貞雄という天才監督も『人情紙風船』『丹下左膳 百万両の壺』『河内山宗俊』の三本しか残っておらず、『抱寝の長脇差』ほか名作は名前のみ知るばかりだ。 こうした映画収集や保存は国立フィルムセンター(現在はフィルムアーカイブ)が担ってきたが、それ以上に見逃せないのは古フィルムの収集家、言い換えると一種の「オタクたち」、コレクターの存在だ。 本書は1988年に『突貫小僧』という小津監督作品が著者の知人のコレクターの手により発掘されてからの30年にわたるコレクターたちとのつきあいや古い映画発掘にかかわった体験記である。『突貫小僧』は1929年度作の15分ぐらいのサイレント喜劇で、九・五ミリのパテベビーという、子供向けのおもちゃフィルムとして古道具屋経由で残っていた。小津の初期のサイレント作品はほとんど残っていないだけにこれは貴重な資料である。著者は修復された『突貫小僧』の上映会を1990年に行って以降、関西の「神戸映画資料館」の安井喜雄さんなどと連絡を取りながら、多くのコレクターを訪ねて彼らの人となりやマニアぶりを取材して歩いた。コレクターたちはみな個性的で独自の映画愛にあふれていた。とくに圧巻は第五章で語られる「生駒の怪人」安部善重さんで、生駒近くの廃駅のホームに住んで膨大なフィルムを持っていると噂されるコレクターである。ここに何年も蓮実重彦氏なども巻き込んで交渉に通い、最後には安部さんの死によって「幻のコレクション」は幻のままに消えた話などは怪談話めいた面白さである。第六章はロシアまで行って、旧満洲国から接収されたフィルムの調査に携わる。 著者はフィルムがどのように残ってきたかを多様な面から探っている。閉鎖された映画館の倉庫、旧家の土蔵、がらくた市の古道具の中に、あるいはマニア間の秘密の情報ルートを通じて、失われたと思われていた「幻の映画」が発見されることがある。今もそれはどこかに眠っているとも言える。古い映画の保存・収集について別の面から光を当てた興味深い読み物である。 【目次】 序章 第一章 民間最大のフィルムアーカイブ 第二章 神出鬼没のフィルムコレクター 第三章 フィルムコレクター歴訪 第四章 映画はさまざまに蘇る 第五章 生駒山麓の伝説のフィルムコレクター 第六章 ロシアへの旅 終章
-
反=恋愛映画論 『花束みたいな恋をした』からホン・サンスまで
¥2,640
著者:佐々木敦/児玉美月 発行元:Pヴァイン 272ページ 188mm × 128mm ソフトカバー *********************** 出版社紹介文より *********************** 無声映画時代の名作から最新のヒット作まで、恋愛/映画の苦手な二人が縦横に語りあう、一風変わった恋愛映画論! 無声映画の時代から現在にいたるまで、数知れず制作されてきた恋愛映画。 そこに描かれる恋愛像はさまざまな形で時代が反映されてきました。 理想とされる恋愛観とそれに対するカウンター。ジェンダーにまつわる多様性と当事者性――無声映画時代の名作から最新のヒット作まで、ジャンルを横断して活動する「思考家」と気鋭の「映画執筆家」が縦横に語り合う、新時代の恋愛映画ガイドが登場! 【目次】 反=恋愛映画宣言(佐々木敦) 「映画の恋」と「映画への恋」(児玉美月) 第一章 リアリティと作為性――二〇一〇年代の日本映画 花束みたいな恋をした/寝ても覚めても/愛がなんだ/本気のしるし/宮本から君へ/きみの鳥はうたえる/そこのみにて光輝く/彼女がその名を知らない鳥たち/溺れるナイフ/永い言い訳 第二章 多様化する恋愛像――二〇一〇年代の外国映画 キャロル/ハーフ・オブ・イット/はちどり/マリッジ・ストーリー/テイク・ディス・ワルツ/ロブスター/ラブストーリーズ/君の名前で僕を呼んで/ブルーバレンタイン/お嬢さん/ムーンライト 第三章 恋愛映画の巨匠?――ホン・サンス 逃げた女/それから/あなた自身とあなたのこと/川沿いのホテル/カンウォンドのチカラ/次の朝は他人 第四章 クリシェとそれを超えるもの――キラキラ青春映画 君の膵臓をたべたい/四月は君の嘘/恋と嘘/好きっていいなよ。/今日、恋をはじめます/オオカミ少女と黒王子/orange-オレンジ-/殺さない彼と死なない彼女/私がモテてどうすんだ/かぐや様は告らせたい 第五章 肉体と精神/リアルとフィクション――ドロドロ性愛映画 (秘)色情めす市場/愛のコリーダ/火口のふたり/愛の渦/性の劇薬/ニンフォマニアック/トーク・トゥ・ハー/倦怠/ラブバトル/アイズ ワイド シャット 第六章 「恋愛/映画」に惹かれるもの――オールタイム・ベスト恋愛映画・日本編 乱れ雲/悶絶!!どんでん返し/ドレミファ娘の血は騒ぐ/トカレフ/あなたがすきです、だいすきです/2/デュオ/unloved/ともしび/ある優しき殺人者の記録/れいこいるか/カルメン純情す/美しさと哀しみと/風たちの午後/戦場のメリークリスマス/undo/渚のシンドバット/贅沢な骨/blue/Dolls/NANA 第七章 「恋愛/映画」に惹かれるもの――オールタイム・ベスト恋愛映画・海外編 天国は待ってくれる/忘れじの面影/心のともしび/突然炎のごとく/白夜/ママと娼婦/カルメンという名の女/牯嶺街少年殺人事件/トロピカル・マラディ/アンナと過ごした4日間/都会の女/13回の新月のある年に/ポンヌフの恋人/ブエノスアイレス/ピアニスト/ドリーマーズ/恍惚/スプリング・フィーバー/詩人の恋/燃ゆる女の肖像 第八章 恋愛映画の現在――二〇二二年の新作 アネット/イントロダクション/あなたの顔の前に/チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい/愛なのに/猫は逃げた/TITANE チタン/リコリス・ピザ 恋愛映画崩壊前夜(児玉美月) 恋愛映画から遠く離れて(佐々木敦)
-
ホラーの哲学 フィクションと感情をめぐるパラドックス
¥3,520
SOLD OUT
著者:ノエル・キャロル 訳者:高田敦史 発行元:フィルムアート社 500ページ 188mm × 128mm ソフトカバー *********************** 出版社紹介文より *********************** 分析美学の第一人者であり、映画・大衆芸術(マス・アート)研究の分野でも活躍するノエル・キャロルによる、ホラーの哲学の初めての体系的著作。 『フランケンシュタイン』『ジキル博士とハイド氏』『ドラキュラ』『エクソシスト』『オーメン』『エイリアン』、さらにはH・P・ラヴクラフト、スティーヴン・キング、クライヴ・バーカー、シャーリイ・ジャクスンなど…… 本書では、古典的名作から現代のヒット作品、さらには無名のB級作品まで、膨大な作品群を縦横無尽に取り上げながら、ホラーとは何か、その本質や定義、物語構造とプロット分析、ホラーの魅力、さらにはホラーモンスターの作り方についてなどを論じる。 そして、哲学的な観点から、存在しないとわかっているものをなぜ怖がってしまうのか(フィクションのパラドックス)、また、恐怖を与えるホラー作品をなぜわざわざ求めるのか(ホラーのパラドックス)について考察する。 吸血鬼、ゾンビ、人狼、悪魔憑きの子ども、人造人間、スペースモンスター、幽霊、その他の名もなき怪物たちが、なぜわたしたちの心を摑んで離さないのか。 フィクションの哲学、感情の哲学、ポピュラーカルチャー批評を駆使して、その不思議と魅力の解明に挑む! 【目次】 謝辞 序 本書が置かれた文脈/ホラージャンル摘要/ホラーの哲学とは? 第1章 ホラーの本質 ホラーの定義 まえおき 感情の構造について アートホラーを定義する アートホラーの定義に対するさらなる反論と反例 幻想の生物学とホラーイメージの構造 要約と結論 第2章 形而上学とホラー、あるいはフィクションとの関わり フィクションを怖がる──そのパラドックスとその解決 フィクション錯覚説 フィクション反応のフリ説 フィクションへの感情反応の思考説 要約 キャラクター同一化は必要か 第3章 ホラーのプロット ホラープロットのいくつかの特徴 複合的発見型プロット バリエーション 越境者型プロットおよびその他の組み合わせ 典型的ホラー物語が与えるもの ホラーとサスペンス 疑問による物語法/サスペンスの構造 幻想 第4章 なぜホラーを求めるのか? ホラーのパラドックス 宇宙的畏怖、宗教的経験、ホラー ホラーの精神分析 ホラーの魅力の一般理論と普遍理論 ホラーとイデオロギー ホラーの現在 訳者解説
-
映画術 その演出はなぜ心をつかむのか
¥2,530
SOLD OUT
著者:塩田 明彦 発行元:イースト・プレス 255ページ 193mm × 135mm ハードカバー *********************** 出版社紹介文より *********************** 視線、表情、声、動きはここまで計算されていた! 観る者を魅了する人物は、どのように作られるのか? 映画監督の著者が、偏愛するさまざまなシーンを取り上げながら、心をつかむ<演技と演出>の核心に迫る連続講義。 【目次】 第一回 動線 第二回 顔 第三回 視線と表情 第四回 動き 第五回 古典ハリウッド映画 第六回 音楽 第七回 ジョン・カサヴェテスと神代辰巳 あとがき
-
映画でみる 移民/難民/レイシズム
¥2,750
SOLD OUT
著者:中村 一成 発行元:影書房 318ページ 188mm × 128mm ソフトカバー ~出版社紹介文より~ 世界に何度絶望しても、映画は「もうひとつの世界」を夢見ることをやめない。この希望なき世界を変える力を! 戦争、虐殺、差別、貧困・格差、植民地主義……直面する現実を前に、「ありえたかもしれない世界」を表現することに奮闘し続ける映画人たちがいる。 タウフィーク・サーレフ、マイケル・ウィンターボトム、フィリップ・リオレ、アキ・カウリスマキ、ニール・ブロムカンプ、トミー・リー・ジョーンズ、ケン・ローチ、ファティ・アキン、ロベルト・ベニーニ、ジル・パケ=ブレネール、ローズ・ボッシュ、ラデュ・ミヘイレアニュ、ラルフ・ネルソン、アーサー・ペン、リチャード・フライシャー、ジェローム・オスト、ヤミナ・ベンギギ、マチュー・カソビッツ……。 日本社会の課題をも照射する映画評論集。世界を変える映画20本。 【目次】 第1章 難民とは何か 1.『太陽の男たち』―人権の彼岸を生きる者たち 2.『イン・ディス・ワールド』―「異郷の死」から紡がれた物語 3.『君を想って海をゆく』 『ル・アーヴルの靴みがき』―歓待の精神 4.『第9地区』―人間、この非人間的なるもの 第2章 越境する民 1.『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』―歴史を逆なでする旅路 2.『ブレッド&ローズ』―バラを求めて~「不法移民」たちの闘い 3.『この自由な世界で』―この「恥」なき世界で 4.『そして、私たちは愛に帰る』―国境と世代をまたぐ「死と再生」の物語 第3章 ホロコーストからナクバへ 1.『ライフ・イズ・ビューティフル』―それでもこの世界にYESという 2.『サラの鍵』 『黄色い星の子供たち』―「加害の歴史」を記憶に刻む 3.『約束の旅路』―生きて、何に「なる」のか? 第4章 「血と暴力の国」から 1.『ソルジャー・ブルー』―「アメリカ」という原罪 2.『小さな巨人』―Tall Tale(ホラ話)が描く西部開拓史の真実 3.『マンディンゴ』―もうひとつの「風と共に去りぬ」 第5章 「人権の祖国」で 1.『スカーフ論争 隠れたレイシズム』―「同化」と「排除」 2.『移民の記憶 マグレブの遺産』―「根こぎ」と「寄る辺なさ」 3.『憎しみ』―〝郊外〟の反乱 最終章 『11'09"01 セプテンバー11』―「他者の痛み」への共感 * あとがき
-
サスペンス映画史
¥3,740
著者:三浦哲哉 発行元:みすず書房 328ページ 188mm × 128mm ハードカバー ~出版社紹介文より~ 「ひとは何を求めて映画を見るのか。自由の幻想を求めてである、という答えが第一にありうるだろう。(…)しかし、それだけではない。自由ではなく不自由の体験を観客に与えようとするフィルム群があることは、誰しもが知るところであるだろう」 “サスペンス”とは、宙吊りの状態、未決定の状態に置かれること。登場人物および観客をもそんな状態に巻き込むのが、サスペンス映画である。ひとはなぜ自らすすんで、そんな不自由と恐怖を求めて映画を見るのか。 感情移入とカタルシスに基づく説話論的サスペンス理解を超えて、確かな足場のない宙吊りの不安、さらには不安がもたらす魅惑を、サスペンス映画はさまざまに組織し、洗練し、そして継承してきた。 「不安が最終的に解消されることなどけっしてなく、(…)ヒッチコック的な眼差しを経由したいま、日常は、映画館の外においても、つねにすでに犯罪を抱え込んだものとして現れる」 グリフィス、セネット、キートン、ラング、ウェルズ、ターナー、ヒッチコック、スピルバーグからイーストウッドまで、斬新な映像分析、小気味よい論理展開、息づまる(映画的な)場面描写によって、新たな映画の見方を提示する。表象文化論の新鋭による、読み物としても第一級の映画史。