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人類学的観察のすすめ

¥2,200 税込

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著者:古谷嘉章
発行元:古小烏舎
256ページ
188mm × 128mm ソフトカバー

~出版社紹介文より~
見慣れた景色、何の変哲もなくみえるこの世界……当たり前すぎて気づかない、ふつう考えもしない身の回りのことについて、いろいろな方向から手当たり次第に、いつもとはちょっと違う見方で「人類学的」に観察の目を注いでみると、思いもかけない驚異に満ちた世界が露わになる。私たちが生きているのは、退屈なわかりきった世界ではない。この世界そのものが奇蹟なのだ。知っていたつもりの「未知の世界」へ誘う、人類学者による観察+考察のエクササイズ。

私たちのこの世界は、人類学者インゴルドの言う「生きものとして住み込んでいる」視点から見たとき、どのような世界として在るのだろうか。それは科学が外側から研究対象とする世界と全く同一のものなのだろうか。

「「私たちの生きるこの世界」「普遍的な単一の自然」「誰にとっても同じ物質」といった、真剣に検討することもなく私たちが受けいれている暗黙の前提について、自らの体験に照らして具体的に再審理を試みること。そこから始めなければ、人類学は人類学たりえないだろうというのが、現時点で私の辿り着いた考えなのである」(本文より)

【目次】
1 フラットランド―二次元世界の住民
2 環世界―違う生物種はそれぞれ別の世界に住んでいる

第一章 水と土のバラード

3 人間たちの住む世界――地球の表面は大気の底である
4 雲散霧消、五里霧中――水と氷と水蒸気とともに生きる
5 アマゾンの乾季と雨季と泥季――アマゾン低地の人々の住む世界
6 蛇行する密林の川――アマゾンのワームホール
7 土に埋めるモノ――ゴミと宝物と遺体
8 縄文人の貝塚――ゴミ捨て場か外部メモリーかモニュメントか
9 凸と凹――人間の生活が景観に遺す痕跡
10 地層断面が見せる歴史――土の中に堆積した時間
11 遺跡と間違われた奇岩――自然が景観に施した彫刻
12 アスファルトという表皮――世界は繕い続けなければ劣化する

第二章 どの材料で何を作るか

13 ただの石というものはない――石器時代人の鉱物学
14 トナカイの角にマンモスの像――物質を素材にしはじめた旧石器時代人
15 粘土とプラスチック――何でも作れる可塑的物質の汎用性
16 さまざまな鉄――硬くて軟らかく脆くて強靭な素材
17 紡ぐ、綯う、編む、織る――絡み合う動きの生み出すカタチ
18 裸の王様の衣装―子―供には見えない豪華な素材
19 畳むと開く――折紙、パッケージ、人工衛星の太陽光パネル
20 紙幣の物質性――御祝儀・御香典と貨幣経済
21 モノとしての絵画――物質としての絵具とカンヴァス
22 効力はカタチに宿るのか――エッジが更新される紙や木の細工

第三章 道具というモノ

23 住むための人間の家――動物の巣は家とよべるのか
24 クモの巣という名の網――メッシュワークとネットワーク
25 車輪のための道/歩いてできる道――舗装された車道と高山の山道
26 伸びてもまた縮むゴム――硫化ゴムが開いた弾む世界
27 翼をください――人間は鳥のように飛べるのか
28 羽衣という道具――変身機能と飛翔機能
29 揺れるための道具――ハンモック、ブランコ、揺り椅子
30 調理に使えない調理用の土器――容器の性能と美的価値
31 ミニチュアは何の道具か――玩具、祭祀具、それとも?
32 離れたものをつなぐ技術――見えない物理的接触がはたす役割

第四章 いろいろな体

33 私たちの体の中の宇宙――至近距離にある不可視の世界
34 血のめぐりと血のつながり――循環する血液と受け継がれる「血」
35 全質変化という素材転換――キリストの血と肉
36 臓器移植とサイボーグ――柔らかい臓器と硬い機器
37 腐敗と発酵――微生物との持ちつ持たれつ
38 コールドスリープとフリーズドライ――保存される体
39 お骨とエンバーミングとミイラ――死後の世界の標準装備
40 人はなぜ像をつくるのか――仏像や神像は代役にすぎないのか
41 朽ち果てるべき木像――耐久性偏愛は普遍的ではない
42 古色と錆と黴――珍重される経年変化、忌避される経年変化

第五章 触ると触れる

43 触知性――脳は知らなくても皮膚が知っている世界
44 自分に触れる、他人に触れる――人間にとって触れ合いとは何か
45 手応えと手触り――把手、ドアノブ、手摺り、枝
46 手を触れないで見る、見ないで手を触れる――美術館と博物館で
47 コンタクトとコピー――接触させて写し取る、接触しないで写し取る
48 聖像と踏絵――唇で触れる祈願、足裏で触れる試練
49 ハプティック・ディクショナリー――触感を表す言葉
50 触感をつくる、触覚を喜ばせる――触文化の開拓
51 ウイルス感染を避けて――人間は触れ合わずに生きられるのか
52 インターネットに触れる――人と世界のインターフェイス

第六章 見える世界・見えない世界

53 可視光線と電磁波――見えるものと見えないもの
54 見かけと人種差別――目をつぶれば人種差別は無くなるのか
55 騙し絵と遠近法――不自然な風景の自然さ
56 窓・レンズ・陳列ケース――透すガラスが遮る
57 胃透視と胃カメラ――輪郭のカタチが示すもの、示さないもの
58 イメージ図のリアリティ――微小世界と巨大世界
59 放射線を出す物質――瀰漫する見えない何かの気配
60 電気と神霊――遍在する見えないパワー
61 気という変幻自在な物質――空気や霊気や元気や電気
62 夢幻能――ワキの目に映る世界を見物する

第七章 千変万化・生生流転

63 消えモノの任務――燃やされたり、流されたり、食べられたり
64 暖房と火炙り――火がもたらす可逆的あるいは不可逆的な物質変化
65 調理という科学実験――物質を変化させて食べられるようにする技
66 間 あそび――隙間は何もないわけではない
67 どこまでが不可分の一体をなすのか――蟻と竹林と電線網とスイミー
68 断片と全体――割符、歴史の天使、ミロのヴィーナス
69 人形劇と人形アニメ――人は動く人形に何を見るか
70 世界そのものが生きている――人類学者インゴルドの世界像
71 世界は物質の流れのなかにある――作ることと生まれ育つこと
72 マルチナチュラリズム――人類学者ヴィヴェイロス・デ・カストロの世界像

73 私たちの生きている世界そのものが奇蹟なのだ

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